Ethiopia / Peru / El Salvador。 9月のテーマは「透明感の、三段階」。スペシャルティコーヒーの世界でよく使われる「クリーン」「透明感」という言葉は、実はひとつの状態を指していません。澄んだ一杯から、香りの立つ一杯へ。そして最後は、発酵が深く入った一杯へ。3杯を順に並べると、どこまでが透明で、どこからが濃さなのか、その境目がはっきり見えてきます。
- Ethiopia|Gedeb Chelchele Washed — 濁りのない、まっすぐな一杯
- Peru|Chirinos Geisha Washed — 同じウォッシュドに、花の香りが一段
- El Salvador|Himalaya Supersonic — 25日の発酵が連れてくる、ワインの手前
World Coffee Discovery は、毎月3種×各100g(¥4,980)でお届けするコーヒーサブスクリプションです。産地・品種・精製の異なる豆を並べ、"違い"そのものを味わう体験をお届けします。
① Ethiopia ── Gedeb Chelchele Washed
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ORIGIN | Ethiopia |
| REGION | Yirgacheffe / Gedeb, Worka Chelchele |
| ALTITUDE | 1,945 – 1,970 m |
| VARIETAL | Heirloom(在来種) |
| PROCESS | Washed |
| FARM | Worka Chelchele Washing Station(小規模生産者 約800名) |
| GRADE | G-1 |
| FLAVOR | ブライトシトラス/マスカット/スムース |
エチオピア南部、イルガチェフェ地区ゲデブのチェルチェレ。標高1,945〜1,970mの高地で、周辺およそ800名の小規模生産者が育てた在来種(ヘアルーム)です。収穫されたチェリーは日々ウォッシングステーションに運び込まれ、生産処理から乾燥まで一貫して行われます。
この産地で近年おもしろいのは、乾燥のやり方です。伝統的なアフリカンベッドでの天日干しに加えて、遮光ネットによる日陰乾燥を併用するようになりました。乾燥期間が10〜14日から20日ほどに延びることで水分活性値が整い、品質が長く安定すると言われています。ゆっくり乾かすことが、そのままカップの澄み方につながっている、と考えると分かりやすいかもしれません。
澄んだ柑橘の酸から入り、続いてマスカットのような甘い香りが立ち上がります。最後はなめらかな口当たりで、余韻は長く、後味に濁りが残りません。輸入元のカッピング評価でも、白ワインを思わせる爽やかさと、ジンジャーのようなスパイシーさが重なる複雑さが挙げられ、"クリーンで強度もあり、アフターテイストも長い" と記されています。
3杯の旅は、ここから始まります。まずこの一杯を基準にしておくと、続く2杯の「どこが増えたのか」が分かりやすくなります。
② Peru ── Chirinos Geisha Washed
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ORIGIN | Peru |
| REGION | Cajamarca / San Ignacio, Chirinos |
| ALTITUDE | 1,731 m |
| VARIETAL | Geisha |
| PROCESS | Washed(天日乾燥) |
| FARM | チリノス地区の組合生産者 |
| CULTIVATION | 栽培期間中 農薬・化学肥料不使用/シェードグロウン |
| GRADE | G1(水分値 10.4% / 欠点率 2.8%) |
| SERIES | Geisha Experience |
| FLAVOR | シトリック/フローラル/リフレッシング |
ペルー北部、カハマルカ県サン・イグナシオ郡のチリノス地区。標高1,500〜2,000mの冷涼な気候と、肥沃な火山性土壌に恵まれた土地です。このロットの生産者として名前が挙がっているのは、1976年生まれのミゲル・エステバン・ラミレス・アグルトさん。1995年にコーヒー栽培を始め、2004年に組合へ加わりました。栽培期間中は農薬も化学肥料も使わず、有機肥料と木陰(シェードグロウン)で育て、収穫後は天日で乾かします。
ゲイシャという品種は、中米の高地で高値がつくことで知られています。ただ、チリノスのように組合単位でまとまった量が仕上がるロットでは、価格が抑えられます。品質担当のコメントも "風味は例年同様、柔らかい印象のなかにもフローラルさを感じられるゲイシャに仕上がっている。コストとカップクオリティのバランスが取れている一品" と、その性格をよく言い当てています。
1杯目と同じ、ウォッシュドです。工程はほとんど変わりません。それでも白い花のような香りが一段ぶん増え、続いてみかんを思わせる柑橘の甘さが広がり、最後は紅茶のような軽い渋みを残して引いていきます。変わったのは精製ではなく、品種です。透明感を保ったまま、香りだけが増える──二段目はそういう一杯です。
③ El Salvador ── Finca Himalaya / Supersonic
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ORIGIN | El Salvador |
| REGION | Ahuachapán / Apaneca-Ataco |
| FARM | Finca Himalaya |
| PRODUCER | Mauricio Salaverria |
| ALTITUDE | 1,500 m |
| VARIETAL | Bourbon / Pacas(Lot M27) |
| PROCESS | Supersonic(Supernatural) |
| HARVEST | 10月 – 1月 |
| PRODUCTION | Project Origin |
| FLAVOR | ストーンフルーツ/チェリー/ワイニー |
旅の終着は、エルサルバドル西部・アウアチャパン県のアパネカ・アタコ。フィンカ・ヒマラヤは、1875年からコーヒーを植えてきた畑で、国内で最初の「スペシャルティコーヒー農園」と呼ばれてきました。柔らかい火山性の粘土質土壌に、糸杉と松を残したシェードグロウン。蜂やうさぎ、蝶、さまざまな鳥がそのまま棲みつく畑です。乾燥にはアフリカンベッドを使い、部分的に風を遮って、ゆっくり均一に進めます。
農園主のマウリシオ・サラベリア氏は、アタコとアパネカの地域で5つの農園を営み、COEでも2013年に3位・5位、2015年に6位・7位と入賞を重ねてきた生産者です。ロットは収穫日ごとに分けて管理され、精製設備は常に清潔に保たれています。ウォッシュド用の水には雨水を使い、パルピング後のチェリーの皮はカスカラティーとして再利用する──環境への配慮が、そのまま仕事の細かさに表れているタイプの生産者です。
そしてこのフィンカ・ヒマラヤこそ、Project Origin の Supernatural 精製が生まれた場所であり、Supersonic がマウリシオ氏との共同作業から2014年に形になった場所でもあります。
工程はこうです。糖度20〜22度まで熟した赤いチェリーだけを手で選び、収穫日ごとに分けたまま、厚く積み上げて温度を上げる。数時間おきに天地を返し、日陰で乾かしながら発酵の進み方を見ます。3〜5日目に山を薄くし、6〜12日目は昼にほぐして夜はシートで覆う。そこから15〜25日かけて薄く広げ、こまめに動かしながら水分を10〜12%まで落とす。乾いた豆は、果肉をまとったまま保管され、糖と果実の風味を吸い込みながら脱穀を待ちます。
カップはストーンフルーツの甘さから入り、続いてチェリーの果実感、最後にワインを思わせる発酵由来の余韻が残ります。Project Origin のフレーバーノートには、ラズベリー、ストロベリー、ワイニー、チョコレート、ブラックカラント、アプリコット、ジューシーと並びます。
ここまで来ると、もう「澄んでいる」とは言いません。それでも濁ってはいない。長い発酵をどこで止めるかの判断が、そのままこの味の輪郭になっています。三段目は、透明感の外側にぎりぎり触れる一杯です。
淹れ方について
各豆のおすすめレシピは、Brew Recipe ページ にまとめています。抽出前にぜひご覧ください。3杯を比べる日は、3種とも同じレシピで淹れてみてください。条件を揃えたときにだけ、豆の差が差として残ります。
ご購入
3種の飲み比べは、World Coffee Discovery から。
▶︎ World Coffee Discovery を購入する(3種×各100g/¥4,980・毎月お届け)
単品でもお求めいただけます。
はじめての方には、3種飲み比べセット(各25g×3種・合計75g/¥2,000・送料無料)もご用意しています。
エチオピア → ペルー → エルサルバドル の順にたどると、透明なところから少しずつ濃くなっていく道筋が、いちばん鮮明に感じられます。9月も、一杯ずつ。